
【未来が決まるモーメント Vol.1】スポーツファンの意思決定は「2度」訪れていた――アジア大会の予定登録タイミング
購買データや検索データは行動の後を教えてくれますが、人が何かを「やる」と心に決めた“意思決定の瞬間”は、従来のマーケティングデータでは見えない空白地帯でした。
カレンダーシェアアプリ「TimeTree」の予定データは、その空白を埋めます。予定には「作成日(決めた日)」と「開始日(動く日)」という二つの日付があります。本シリーズ【未来が決まるモーメント】では、TimeTree未来総研がこの行動前のデータから、生活者が未来を決める瞬間を読み解きます。
第一回は2026年9月19日~10月5日の間で開催されたアジア競技大会(愛知・名古屋)を題材に、TimeTreeで作成された「アジア大会」を含む予定から、「観戦」の意思決定の裏側を探っていきます。
公式からの情報発信は早期に意思決定するコアなスポーツファンの「行く」機運を確実に高める
「アジア大会」を含む予定について、予定作成日から予定開始日までの日数を見たところ、中央値は31日前になっていました。また、作成された予定の約4件に1件は、開始の11日前から当日までの間に作成されています。一方、70日以上前、2か月を超える前から予定が作成されているものも4件に1件あります。

縦軸は全体を100とした割合、横軸は左が220日前、右が1日前(205日より前は件数が少なく集計対象外)。棒の色は左から70日以上前・12〜69日前・1〜11日前の3区分、縦の点線は中央値(31日前)/チケット日程の出典は大会公式サイト
上の図は、予定作成を開始日から遡って7日ごとに示し、その上にチケット販売などの時期を並べたものです。開始直前の1週間(1〜6日前)が最も多く、全体の15%を占めます。開始から遠い時期ほど割合は低くなります。これはどの予定にもみられる傾向ですが、日数には幅があります。
この作成のタイミングを、実際のアジア大会のチケット発売の時期と並べると、チケット発売の時期と重なって予定作成が増えていることが分かります。
例えば開始の約190〜210日前(2〜3月ごろ)と、約150日前(4月下旬ごろ)に、ほかの時期より目立つ予定作成のまとまりがあります。2〜3月はチケットの先行販売、4月下旬はプレイガイドでの先行販売の開始にあたる時期です。
公式の発信があった時期に、予定の作成も動いていることが分かります。
次に、予定作成日と予定開始日の関係について、アジア大会に限らず様々なイベントごとに比べました。

横棒グラフ中の点は中央値です。グラフの左端は『予定の25%がここまでに作成された日数』、右端は『75%がここまでに作成された日数』です。グラフの長さは、決める時期のばらつきの大きさを表します。中央値とグラフが右に寄っているイベントほど、イベントの開始日より早いタイミングで予定が登録されていることを示しています。
イベントの種類によって、中央値は5日前から66日前までと幅がありますが、ある傾向が見えます。
例えば、音楽フェス「A」は66日前、花火大会「A」は34日前です。
これらは、事前にチケットを購入して会場で参加する人が多いタイプのイベントです。開催日程が決まり次第、また、チケットを購入でき次第予定を作成するため、中央値が予定の開始日から離れています。「チケット型」と推測されます。
一方で、WBCは14日前、ワールドカップは16日前となっており、直前に予定を作成する人が多くなっています。これらのイベントは会場で観戦することもできるものの、応援している日本代表の勝ち進み具合に左右されたり、自宅やパブリックビューイングなど比較的気軽に訪れることのできる場所で観戦できるイベントです。開催日に対して直前に入れる人が多くなっている「テレビ観戦型」の予定と推測されます。
これらを踏まえて、アジア競技大会についてみてみます。アジア競技大会は中央値が31日前となっており、「チケット型」の予定に近いです。一方で、25%点は「テレビ観戦型」に近くなっています。これは、今回のアジア競技大会が名古屋で開催されているため、チケットを購入して会場で観戦する層と、大会の盛り上がりを見ながら放送で観戦する層の2種類がいるハイブリッド型の予定であるためと考えられます。
▶ データが読み解けること ――「チケット型」は1ヶ月以上前、「テレビ観戦型」は直前に決まる
アジア競技大会の予定作成日を見ると「行く」、「観る」と決めるタイミングは一様ではありません。予定の約8割は開始の1週間前までに作成されている一方で、残り2割の意思決定は直前の1週間に集中しています。早くから決める層はチケット販売などの公式情報に、直前に決める層は大会の盛り上がりそのものに反応しており、同じイベントでも「決める瞬間」は少なくとも二度訪れていることがわかります。
「開会式」は全体の行動意欲をあげるスイッチ
作成された予定を開始日ごとに見ると、どの日に動こうとしているかが分かります。

上の図は、アジア競技大会を予定している割合を予定の開始日ごとに並べたものです。
開会式後の平日(9月24日・25日・28日〜30日、10月1日・2日)の割合は3.1〜5.1%となりました。平日にもかかわらず途切れず予定が入っていることがわかります。一方で、開会式前は競技予定があるにもかかわらず、平均で2.0%と低い水準です。このことから、開会式のような分かりやすい区切りはスポーツファンの参加意識に影響を与えていることが推察されます。競技が開催されていても、開会式のような分かりやすい区切りの前は、低い水準にとどまっています。
サッカーのなど注目度の高い競技が開催される日は、同じ休日の中でも予定している割合が高くなる傾向が見られます。例えば、同じ連休でも日本代表戦がある9月20日・23日は予定作成率が6.8・6.5%なのに対し、日本代表戦のない21日・22日は4.8・5.2%に留まりました。また、開会式前でも9月16日は4.4%と少し山になっています。グループステージからラウンドが進んだ9月26日(準々決勝)・10月3日(決勝)は9.2・9.4%で、期間中で最も予定している割合が高くなりました。
▶ データが読み解けること――「特に注目される競技」にピークが集まるが「土台の高さ」が出るのは開会式以降
開会式は、予定が最も集まる日ではないにもかかわらず、生活者の行動水準を変える「区切り」として働いていました。開幕前の土日(9月12日・13日)が1.6〜1.9%にとどまる一方、開幕後は平日でも3.1〜5.1%と約2倍の水準が続きます。日々の山を決めるのは注目競技と休日の重なりですが、その土台の高さを決めたのは、大会が「始まった」と認識できるか、と言えるでしょう。
まとめ —— 「決める瞬間」と「動く日」、スポーツ大会における二つのモーメント
アジア大会の予定データから見えた「未来が決まるモーメント」は、二つあります。
一つめは、「どこで観るか」が決まると、予定を作る瞬間も決まる、ということです。アジア大会の予定は開始の約1か月前を中心に作成されていますが、4件に1件は70日以上前、別の4件に1件は11日前から当日までに作成されており、幅は他のイベントと比べても広くなっています。会場で観る人はチケットを取った時点で予定を作り、放送で観る人は大会が近づいてから予定を作る。日本開催で両方の層がいるアジア競技大会では、「チケット型」と「テレビ観戦型」が混ざった形になっていると考えられます。
二つめは、開会式の前後で予定の入り方が大きく変わる、ということです。開会式より前の日は、競技があっても休日で2%前後にとどまります。開会式の後は、平日でも3〜5%が続きました。サッカー日本代表戦のような注目競技がある日はさらに高くなりますが、それは日ごとの山であって、全体の水準を変えたのは開会式という分かりやすい節目でした。 予定データは、「作成日(決めた日)」と「開始日(動く日)」の両方を記録しています。今回のアジア大会では、決める瞬間は観る場所によって変わり、動く日は開会式という節目で変わっていました。「未来が決まるモーメント」は、一つのイベントの中にも複数あります。本シリーズでは、さまざまな予定からこのモーメントを読み解いていきます。
調査概要
分析データについて
2026年10月5日までに登録されたデータを対象として分析
分析に使用したデータは、匿名性を保つために統計的に処理しています
※数値の引用・掲載時はTimeTree広報までご一報ください。
TimeTree未来総研について
TimeTree未来総合研究所は、全世界の登録ユーザー数が7,500万人を超えるカレンダーシェアアプリ「TimeTree」に登録された170億超の予定データを統計的に分析するTimeTreeの社内研究所です。多様性に溢れ、先の読めない時代においても、みなさまが納得して未来を選べるきっかけをつくるために、予定データから見える世の中の動きや未来の兆しを発信しています。
TimeTree未来総研Webサイト:https://timetreeapp.com/intl/ja/future-research-institute
予定データを活用したTimeTreeの広告サービスについては、以下をご確認ください。
「予定」にターゲティングできる広告ソリューション「TimeTree Ads」:https://timetreeapp.com/intl/ja/ads
カレンダーシェアアプリ「TimeTree」とは
カレンダーシェアアプリ「TimeTree」は、共有とコミュニケーションを前提にしたカレンダーサービスです。家族、パートナー、サークル、職場など複数人数の予定共有が簡単にできて、目的に応じたカレンダーを複数つくることができます。2015年3月24日よりサービスの提供を開始、2026年6月には全世界で登録ユーザー数が7,500万を突破しました。「スマホの中の壁掛けカレンダー」として、ユーザーのみなさまの毎日の生活の中で幅広くご利用いただいています。
株式会社TimeTree 概要
社名:株式会社TimeTree(英語表記:TimeTree, Inc.)
設立:2014年9月1日
代表者:深川泰斗(代表取締役社長)
所在地:〒160-0023東京都新宿区西新宿6丁目18-1住友不動産セントラルパークタワー18階
事業内容:カレンダーシェアアプリ「TimeTree」の運営・開発