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2022年4月6日

社長、向いてない問題|TimeTreeの #オープン社長報

オープン社長報

TimeTreeのオープン社長報は、CEO Fred(深川 泰斗)が社内に向けて書いた、いま考えていることやメンバーに向けたメッセージをだれでも読める公開版としてお届けします。

第3回目は「社長、向いてない問題」

苦手だけど頑張ります、社長業

僕はもともと「いつか起業するぞ」というタイプでもなかったし、リーダーに向いてるタイプでもないと思ってました。 TimeTreeを起業するときも、まあ僕が一番年上で、元々ディレクターでまとめ役的なポジションだったので深く考えたり話し合わずに代表を担当しました(笑)。

当時はその役割の意味もわかってなかったし、向いていないのなら、それを活かした独自のやり方があるだろうと思ってました。

みんなも「社長!」って感じではなくて「社長役をやっているFred」と普段通り接してくれました。僕も「苦手だけど、まあなんとかがんばるんで……」という感じでした。

しかし、徐々にメンバーが増えてベンチャーキャピタルから投資を受けたり、ピッチイベントに出たり、オフィステナントを借りる契約交渉をしたり、外に出れば「社長役をやってる」は関係なく「この人が会社の代表」で、それ以外のなんでもない。苦手とかも知ったこっちゃない。と思い知らされました。

2016年の資金調達。Kakao Venturesが出資を決めてくれたときのインタビューで「なぜ会社のメンバーはあなたについてきたと思いますか?」と聞かれ、そのときも「ついてきたとかじゃないんですよね。チームがあった。みんな同じ気持ちだった。その中で僕が代表の役目をやっているだけ」と話したことを覚えています。

TimeTreeで知り合ったメンバーは、社長としての僕しか知らない。僕はヤフー株式会社に8年、その前の会社で3年働いていて11年間はサラリーマンだった。TimeTreeは2022年で創業8年。まだまだサラリーマン期間の方が長いんです。いままでずっと社長が担うべき役割、社長の仕事を学んでいく毎日だったし、それはいまでもおなじ。そもそも社長ってどうあるべきなんだろう、と悩みながらやってきてます。

苦手だけど頑張ります、じゃ済まなくなってきた社長業

メンバーが20人、30人となってくるにつれて段々「苦手だけどがんばります」では済まないと感じてきました。それで働くみんなが不利益を被るなら顔向けできない……と。

「会社に問題がない」なんて状態はありえなくて、サービスのこと・お金のこと・ひとのこと……常になにか問題を抱えています。なにかがうまくいっていても「さらに成長させないといけない」という焦りが思考の基本になって、常に頭を悩ませていて「嬉しい」とか「幸せ」みたいなものが、一体なんなのかわからなくなっていきました。

自分にとって幸せってなんだっけ? と書き出してみたり。何社も社長を経験している社長業の先輩であるCSOのFrodoに話したら、Frodoも昔おなじことやっていたと言われて、なんかホッとしました。

「社長とはこうでなければならない」はない。では、そんな中で僕自身は「僕が社長としてフィットしないタイミングがきたら交代しよう。でも自分から逃げるのはやめよう」と決めました。

とにかく問題から逃げない。試行錯誤し続ける。TimeTreeはスタートアップでチャレンジャーなのだから、会社の代表が苦手でもなんでも逃げずに考え続けるのが、会社みんながチャレンジャーでいられるために大事なんじゃないか、と考えました。

僕が指針とする「社長」の姿

普段からどういう役割を意識しているか、どういうやり方を理想として目指しているか。参考にしていることが大きく3つあります。

スタートアップのCEOの仕事

アメリカの有名スタートアップ養成 & 投資会社であるY Combinatorのコラムに「CEOの最初のフェイズの仕事はプロダクトを創ること、次のフェイズの仕事は会社を創ること」とあります。

会社を創るってどういうこと? という記事には3つまとめられています。

  1. 幹部チームを雇い、確実に協力して働けるようにする

  2. 目的とアラインメントを作り出す

  3. 企業文化を育てる

結構わかりやすく、異論もない。なるほどな、と思います。 目的を作るとは、長期のミッションのことでもあり、その時々の中期目標や短期テーマのことでもある。アラインメントは、それらがちぐはぐでなく統合され、相互に補い合い、効果を高め合うような戦略や連携できる組織構造チームワークを作ること・育てること・メンテナンスすることなのかな。

参照記事

会社は誰のもの?

日本を代表する経済学者 岩井克人の著作『経済学の宇宙』で「法人とはなにか、経営者とはなにか」にこのように答えていました。

経営者は、株主の代理人ではなく、会社と信任関係にある。例えば会社が意識のない患者だとしたら、経営者は医者である。会社は物言えないが、経営者による治療行為を信じている。ここに、合理性を追求した経済学の中に合理性からは縁遠く感じる「信任関係」という「倫理性」が出てくる。

これもわかる気がします。経営者による会社の私物化はあってはならない。逆に完全に株主の持ち物でもない。僕がよくたとえに出す漫画『マネーの拳』では「会社は従業員のもの」と言ってました。これもこれで分かる。

つまり、会社は株主のものでも、従業員のものでも、ユーザーのものでも、社会のものでもある。同時にそれら全部のものではないみたいなものなのかな。

そして、社長は「会社そのもの自体はものを言えない。その会社に変わって、成長や価値を最大化するように関係者の利害をバランスする」。そういう役割を持つ面もあるのかな。

任天堂の岩田さん

インタビューで「尊敬する経営者は?」と聞かれると、任天堂の岩田社長を挙げます。もちろん面識はなく、任天堂が好きでWebの記事などでその人柄を知る程度です。

岩田さんがあるとき、ハル研究所という会社の社長を引き受けたときに、全社員と一対一で面談したという話。そして「コミュニケーションがうまくいかないときに、相手のせいにするのはやめよう」と決めた話。このエピソードを知って以来ファンです。

岩田社長の言葉で特にずっと覚えてるものがあります。

「私心というものを、どれだけちゃんとなくせるのかが、マネジメントではすごく大事だ」と、わたしは思っているんです。

ひとは「この人は自分の損得でこんなこと言ってるんじゃないか?」と思ったら素直な気持ちで話を聞けない。そうすると交渉や政治が必要になってくる。

自分のアイデアを証明して凄さを見せたい、自分の手柄にしたい、自分の仕事を増やしたくない。そういうものを捨てて「目的・ミッションのために」を言葉でも態度でも示せれば、みんなが余計な駆け引きをしないで最短距離でミッション達成に向かうことができる。

文化醸成にコミットして、ある意味会社を象徴する存在である社長という役割の人が、誰よりも私心をなくして目的にフォーカスすること。それを体現することが大切なんだなと学びました。もちろん社長に限った話じゃなくて、リーダーシップを取るすべての人、あらゆるメンバーがそうであると理想的だと思います。

インタビューは下記サイトにて一部無料で読めます

今日はおしまい。

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