ブログ

2022年3月1日

「予定を自分だけで管理するむずかしさ」「未来を可視化できない不便さ」 CEO Fredの課題感から生まれたカレンダーシェアの発想と、個人の"思い"に寄らないものづくりのスタンス。

メンバーインタビュー

TimeTreeの開発・運営メンバーの働き方や大切にしている考え方を紹介するインタビューシリーズ。今回はCEO深川(Fred)の思考にせまります。

2015年3月、前職が同じだったメンバー4人と立ち上げた「TimeTree」。Fredはいままで、どのようなことを考えながら会社の舵取りをしてきたのでしょうか。

TimeTree創業の経緯、ものづくりと組織づくりの両軸からFredの思考を掘り下げていきます。

話を聴いたメンバー 深川 泰斗 CEO TimeTreeでのニックネームはFred(フレッド)。九州の大学院で社会学・文化人類学を学び、2006年にヤフー株式会社へ入社。ソーシャル・コミュニケーションサービスの企画を担当。2012年にヤフーからカカオジャパンへ出向後、2014年に株式会社JUBILEE WORKS(現 株式会社TimeTree)を共同設立。2015年3月にカレンダーシェアアプリ「TimeTree」をリリース、2021年7月に日程調整サービス「Tocaly(トカリー)」をリリース。

前社名「JUBILEE WORKS」に込めた思い

——まずFredがCEOとして、「TimeTree」でどんな役割を担っているのか教えてください。

役割はたくさんあります(笑)。事業やプロダクトの方向性など会社の未来を考えたり、社内のコミュニケーションやアイデアが活発に生まれてくる組織づくりや採用活動をしたり、資金調達などを担当しています。

——「TimeTree」はどんなきっかけで創業したんですか?

前職のヤフー株式会社と出向先のカカオジャパンで、同じプロジェクトを担当していたメンバー4人と立ち上げました。

——創業時の社名は「JUBILEE WORKS(ジュビリーワークス)」でしたよね。どのような意味を込めたんですか。

「JUBILEE」は旧約聖書に書かれている、50年に一度、借金が帳消しになる祭り「50年目の聖なる年」の意味からとりました。既得権益がなくなって、みんなにチャンスがめぐってくる感じがインターネットっぽいなと思ったんです。

——Fredは音楽が好きなので、よく聞く曲からインスピレーションを受けているのかなと思っていました。ここで聖書が出てくるとは……。

聖書と音楽、半々だね。ミュージシャンの中村一義が作った曲「ジュビリー」の歌詞からも意味をとっていて。曲のサビに「日々、祝え!」とあって。その部分がいいなと思ったんだよね。

会社を創業すると会社やサービスが社会的に大きなインパクトをいかに生み出せるかに主眼がおかれてしまいがちだなと思っていて。でも僕は、僕らを含めた世の中の人みんなが日々を祝いながら、毎日を送れたらいいなと考えたんです。そして、日々を祝うかのようにものづくりができたらいいなと。

——そんな深い意味が込められていたのに、社名を変更して未練はなかったんですか?

未練はなかったです(笑)。

——なかったんだ(笑)創業メンバーとサービスをつくる上で、大切にしたことはありますか?

「なにをつくるか」よりも「誰とやるか」を大切にしました。バンドを組むように一緒に働きたい人とチームを組む。だから「このメンバーでなにができるだろう?」と考えながらプロダクトのアイデアを練っていきました。

「カレンダーって、割と好きだな」創業時にカレンダーシェアアプリを構想したきっかけとは?

——カレンダー以外にどんなアイデアがあったんですか?

3〜4個考えていて、スライドシェアや様々な物事のランキングを作成するようなサービスを考えていたと思います。いま思い出すと恥ずかしいな(笑)。

——数あるアイデアからカレンダーシェアサービスをつくったのはなぜですか?

僕は観念的な人間なので、何のために生きているのか、仕事ってなんだとよく考えるんですよね。その時に「過去の積み重ねがいまの自分である」と思うことがあって。過去の中に、いまの自分を形づくる決定的な出来事があったり、豊かにしてくれた思い出や時間がたくさんあるんですよね。充実した人生を送るきっかけが、そこらじゅうに散らばっている。

だから自分が経験するものごとはできる限り納得しながら選びたいなと思ったんです。それがカレンダーサービスをやろうと思った、根本にある思いですね。

——日常の中にそう思うきっかけがあったんですか?

そうだね。僕は音楽が好きなので、一時期年間100本のライブを観ていたんです。おなじ時間に別の場所で開催されるライブも、できるかぎり観たくてタイムスケジュールを片手にいろいろな会場を行き来していたんです。同時にふたつ見れないのがすごくもどかしかった。

あとは結婚して子どもが生まれて、自分以外のひとの時間も生活に流れ込んできたときに、それぞれの予定(=時間)が可視化できず喧嘩したり、約束を忘れてしまったり。予定にはさまざまなひとや要素が関係していて、管理は決して簡単なものではない。分かっていたら選択できたかもしれない時間が世の中にはたくさんある。

そんな課題感から時間に関するサービスが気になるようになって。前職でもカレンダーサービスをつくる仕事をしていたので、時間について考えるのは面白くて割と好きだなと思ったんです。

——それは初耳です。カレンダーに関わる仕事がしたかったんですか?

どうしてもやりたかったわけではないですね。「これがやりたくて、やっている」みたいな、そんな純粋な意志ってないと思うんですよ。環境と影響しあって、「自分はこれが好きだな〜」って変化してくものだと思っている。

だから、カレンダーがどうしてもやりたかったというよりは、他と比べて「カレンダーって、割と好きだな」という感覚ですね。

——カレンダーシェアアプリの企画を創業メンバーにどのように伝えたんですか。

シンプルにふたつの課題感を伝えました。ひとつが「カレンダーがひとり用の道具になってしまっていること」。ふたつ目が「未来を可視化できない不便さ」でした。

TimeTree初期のコンセプトスケッチ

予定を立てたり、実行したりするには相手の存在が必要なのに、スケジュールをメモするときは各自手帳などに書き入れていきますよね。そうなると僕は手帳に書いたけどあの人はどうかなと心配になる。予定変更になったら各自予定を書き直さなきゃいけなくなる。手間が増えてしまうんだよね……。

——確かに。書いたメモを第三者に確認してもらうわけでもないから、日付を間違えたり、予定を見落としちゃったりもしますよね。

そうそう。あと情報量がどんどん増えていくのに、あたりまえだけど僕たちには1日24時間しかない。数ある情報から必要なものを選択していかないと、やらなきゃいけないこと、やらなくてもいいことがごちゃ混ぜになる。情報に飲まれていってしまう。

だから、未来を可視化して、「この時間は安心してこれをしよう」と予定にきちんと向き合えるようにしたかったんです。

このふたつを解消できるのは、カレンダーが簡単に共有できてコミュニケーション機能を組み込んだサービスではないかと仮説を立てて、実装してみようとなりました。

個人の“思い”だけでサービスはつくらない。大事にしているのはユーザーの視点

——創業何年か経つと現場に仕事を任せてしまう経営者もいると思うんですが、Fredはいまでもプロダクト開発に携わっていますよね。

プロダクトも組織も規模が大きくなってくると、部署・チーム・プロジェクトの方向性が個別に最適化されていったり、統一感なく進んでしまったりすることがあるんだよね。

だから、僕は全体観からズレが生まれないよう、各チームやプロジェクトに働きかけるようにしています。

——俯瞰しながら全体を統合しているんですね。Fredは企画をするときになにを大切にしていますか?

個人の思いも大切だけど、いつも一番大切なのは目的です。そして目的の達成のためには、ユーザーさんが便利だと思ってくれるか、ユーザーさんにとってわかりやすい内容になっているか。それが満たせないのであれば、個人の思いやこだわりは何の役にも立たないと思っています。

——プロダクトは徹底してユーザー目線でつくるようにしているんですね。

そうですね。僕がやりたいことをそのまま企画化することはありません。アイデアをメンバーに相談したり、家族に聞いて意見をもらったりしています。そこでみんなが良いと感じてくれてたら進めるようにしています。ユーザー目線を徹底するとはとても難しいことで、十分できているとはまだ到底言えないけど。

——他にも企画を進める際に気をつけていることはありますか?

「なにを目指そうとしているのか」、関わる人みんながイメージをつけられるようにすること。そうしないとエンジンがかかりにくい状態になってしまうんです。だから、僕たちはなに賭けようとしているのか、ポイントを明確に伝えるようにしています。

それと「とりあえずやってみてダメだった」とならないように、できる限り不確実性を減らすことが大事だと思います。

キーワードは「賭け」! TimeTreeはなにに賭けたのか?

——Fredは社内でよく「賭け」について話していますよね。賭けという言葉はFredを表すキーワードだと思います。社長になったのも賭けだったとか。

人生の選択で迷ったときは、面白い方を選ぶにしています。

これまで感じていた課題を解決するためにカレンダーシェアアプリをつくったことも「賭け」。なぜなら、カレンダーシェアアプリで課題解決できるかどうか確実ではないからです。

——確かに絶対ではないですよね。

でも、周りを見渡してみると家の壁や冷蔵庫に紙のカレンダーを貼り付けて、家族みんなの予定を書き入れて、共有している家庭がたくさんある。まったくなかった行動を生み出すのではなく、いままでみんながやってきたであろうことをアプリに落とし込めば、使う人はいるんじゃないかなと思いました。

グループでアプリを使う前提だと共有相手を招待するので、ユーザー数も伸びていくんじゃないかと見立てました。

——なるほど!むやみやたらと賭けているわけではないと。

創業時、世の中のひとみんながLINEなどのメッセンジャーアプリをスマホに入れていたんですよね。おじいちゃんおばあちゃんでもLINEだけはダウンロードしている。みんながアプリをインストールして起動し、チャットできるリテラシーがある状況でした。サービスを展開する上でこれは大きなチャンスだと思っていました。

——使う人を選ぶサービスだと浸透していかないですもんね。

チャットは流れていくからこそ、気軽さがあったり便利さがあったりしますが、情報をストックするには機能的に弱いんですよね。でもストックしたい情報ってあって、それは時間を軸に整理できることがほとんどなんじゃないかと思って。

だからカレンダーのフォーマットを使えば、スムーズに情報を貯めたり、引き出したりできるのではと考えました。

——それも賭けポイントですね。

そうそう。でもチャットが普及した後だったからこそ、カレンダーシェアアプリの可能性が見えたんだよね。こんな風にサービスを新しく立ち上げたり、アップデートしたりする際は、いろんな角度で賭けの検証をしています。

——検証する際に大事にしていることはありますか?

僕はもともと現地でのフィールドワークを調査手法とする文化人類学を専攻していたこともあって、一次情報に触れることを大事にしています。

学生時代も調査対象の人々にたくさんインタビューをする毎日でした。。一次情報に触れ続けていると、自分自身が知らず知らずのうちにその環境に巻き込まれて価値観が組み変わっていくんです。その一時情報から受ける驚きみたいなものを大事にしています。

新しいアプリでも誰かがレポートしたものを読むだけなのか、自分でインストールして触ってみるのかでは雲泥の差があると思っています。だからできる限りアプリに触れるようにしているし、ターゲットユーザーになるような人に直接会って話を聞くのも大事にしています。

——賭けポイントをいくつも抱えながらローンチした「TimeTree」。最初はどのメディアも取り上げてくれなかったそうですね……。気勢をそがれてしまったんじゃないですか(笑)?

そうなんです……。プレスリリースを出しても、どこからもお呼びがかからなくて。家で「これはやばいぞ」とへこんでいたら、妻がその様子をツイートしたんです。

その内容があれよあれよという間に話題になって。メディアにも取り上げてもらい、ユーザー数がいきなりのびました。ちなみに妻とは、つきあって1ヶ月後にプロポーズし結婚しました(笑)

——賭けに溢れた人生ですね(笑)

聴き手:TimeTree PR 渡部 晋也(Steve)

テキスト:佐々木まゆ

TimeTreeの自律的な組織づくりについて、後編につづきます

TimeTreeの採用情報

TimeTreeのミッションに向かって一緒に挑戦してくれる仲間を探しています。くわしくは採用ページをご覧ください。