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2021年7月28日

TimeTreeの新規事業! 日程調整サービス「Tocaly(トカリー)」立ち上げの経緯を聴きました

Tocalyメンバーインタビュー

2014年の創業以来、カレンダーシェアアプリ「TimeTree」の開発を続けてきたTimeTree。そんな私たちがこのたび、日程調整のための新しいSaaS「Tocaly(トカリー)」をリリースしました。Tocalyは主にビジネスシーンでの日程調整にフォーカスしたサービスです。

なぜTimeTreeが7年目のいま新規事業にチャレンジしたのか。Tocalyの立ち上げに携わったCEOの深川(Fred)、プロダクトマネージャーの吉本(Anju)、事業開発責任者の古市(Tony)の3人に話を聴きました。

話を聴いたメンバー

深川 泰斗 CEO

TimeTreeでのニックネームはFred(フレッド)。九州の大学院で社会学・文化人類学を学び、2006年にヤフー株式会社へ入社。ソーシャル・コミュニケーションサービスの企画を担当。2012年にヤフーからカカオジャパンへ出向後、2014年に株式会社JUBILEE WORKS(現 株式会社TimeTree)を共同設立。

吉本 安寿 Tocaly プロダクトマネージャー / TimeTree Growth & Business Platform マーケティング責任者

1985年生まれ。TimeTreeでのニックネームはAnju(アンジュ)。新卒でヤフージャパンへ入社して新規広告プロダクト企画や広告商品企画業務に従事した後、13年にカカオジャパンに出向しサービス企画業務を担当。15年にJUBILEE WORKS(現 TimeTree)に入社し、TimeTreeのサービス企画とマーケティングを担当。

古市 悠 事業開発責任者

TimeTreeでのニックネームはTony(トニー)。国内大手通信会社にてコンシューマー向けサービスの企画・開発、法人営業及び官公庁への出向を経て、2016年に株式会社JUBILEEWORKS(現 株式会社TimeTree)に入社、様々な事業者とのパートナリングなど事業開発に従事。

聴き手:TimeTree 渡部 晋也(Steve) テキスト:内島 美佳 ※写真撮影時のみマスクを外しています

ユーザーに寄り添い続けるためのビジネス成長、そのための新規事業「Tocaly」

——これまでカレンダーシェアアプリ「TimeTree」1本で展開してきたところ、創業7年目のタイミングで新サービス「Tocaly」をリリースしたのはなぜですか?

Fred 創業からずっとTimeTreeを成長させてきて、多くのユーザーに使ってもらっています。今後もその成長を止めずユーザーに寄り添い続けるには、ビジネス視点での事業成長も必要です。それでビジネス成長のためのもう一本の柱として「Tocaly」をリリースしました。新サービスの案は10個くらい出して検討しました。いろいろあった案の中に「日程調整」がありました。

Tony 当初は今までのTimeTreeに関連するビジネスを中心に考えていましたが、TimeTreeという枠を外して考え始めたのがTocaly誕生のターニングポイントでしたね。

https://tocaly.com/

——数多くの案があった中、なぜ日程調整サービスに決めたんですか?

Fred Zoomをはじめとするコミュニケーションツールが普及して、今までよりもずっと人と会いやすくなり、社外の人とのミーティングも増えました。移動のことを気にしなくてよくなると、人と会うためのハードルって時間が合うかどうかだけになりますよね。だから今、日程調整はとても重要な課題だと思うんです。

Anju コロナ禍とリモートワークの普及で、社会全体の変化を感じました。また、日程調整に関して相対的に課題感が強くなりましたよね。リモートワークがあたりまえになり、オンラインミーティングの機会もどんどん増えています。だれかと日程を合わせる作業って、じつはものすごく煩雑なんですよね。この1年で日程調整の課題解決にチャレンジしようって意識が強まった気がしますね。

——日程調整やコラボレーションのためのサービスは国内外でも盛り上がってますよね。

Tony アメリカからはCalendly(カレンドリー)など大きな評価額を得る企業が出ていましたね。

Fred Calendlyのニュースは社内でも話題になりましたね! 予想外のところから急にユニコーン企業が登場したのでおどろきました。

Anju 当初はTimeTreeに関連するビジネスを中心に考えていたところから、一度その枠を外して広くサービスを考えてみようと思った。そのきっかけのひとつがCalendlyのニュースでしたね。

Fred TimeTreeに関連して新しいプロダクトをつくるなら家族、パートナー、友人などの間の日程調整になると思うけど。Calendlyを見ていたら日程調整の一番のニーズはビジネスシーンなんだなと気づきましたね。

——Tocalyのミッションは何ですか?

Anju ミッションは「摩擦レスな方法で空き時間の最適な消費を促す」ことです。

TimeTreeは予定自体に価値があるんですよね。共有相手の予定を見て、「あの人はこの日こういう予定が入っているから、自分はこう動こう」って。Tocalyでは逆に、空き時間に価値を見出しています。TimeTreeとTocalyは同じようなサービスに見られるかもしれませんが、じつは裏表の関係なんです。

Fred TimeTreeとTocalyの関係を図にすると下のようになります。予定管理にTimeTreeを使っている人もいればGoogleカレンダーを使っている人もいて、各々のツールに予定データを入れている。

Tocalyの役割は、この予定データが入っているツール同士の橋渡しをして上手く調整することです。ノードとパスみたいな役割分担ですね。だからTimeTreeとは予定と向き合う立ち位置が違うし、Googleカレンダーと正面切って戦うわけでもありません。担う領域が別だし、補い合う関係になれるのではないかと。

Anju 予定データと予定データの間の部分が、今すごく手間がかかったり分断されていたりするところですよね。摩擦がいっぱいあるんです。だからミッションに「摩擦レス」と入れました。ここをスムーズにすることが課題解決への第一歩かなと思います。

TocalyとTimeTreeが担う役割の違いについて

——TimeTreeブランドの「TimeTree〇〇」というサービス名にしなかったのはなぜですか?

Fred じつはそんなに大げさな話ではなく、一大決心でそうしたわけでもないんですよ(笑)。僕とAnjuと(CCOの)Frodoが案を持ち寄ったときに、3人とも「TimeTreeじゃない名前がいい」という意見だったんで。そこはAnju的にはどう?

Anju TimeTreeは家族のすれ違いをなくすもので、日程調整は空き時間をマッチングさせるものです。そもそも課題が全然違うし、当然ペルソナも、サービスの使われ方も違います。

「予定を確認したい」「新しく予定を登録したい」と思ったらTimeTreeを起動するけど、「日程調整したい」と思ってTimeTreeを開くことはおそらくないんですよね。だからサービスを使う方々の入り口を分けるのが正解ではないかと思いました。

Fred 僕がサービス名に「TimeTree」と付けない方がいいと思ったのは、名前のイメージからです。TimeTreeは家族の予定共有ツールとして成長してきました。ビジネスユースの日程調整ツールを探している人が検索して「TimeTree〇〇」と出てきても、TimeTreeを知っている人なら「家族用の日程調整ツールか」と思ってクリックしないじゃないですか。それはもったいないと思ったんです。

連携先としてTimeTreeを選ばなかったのもほぼ同じ理由です。Anjuが言ってくれたようにターゲットユーザーが違うのと、TimeTreeはビジネス用途ではないからです。

Tony 社外の人と話していると「TimeTreeと連携しないんですね」というのはよく言われますね。

Fred まずGoogleカレンダーと連携して、そこで成功できるプロダクトじゃなかったらいきなりTimeTreeと連携しても上手くいかないと思うんですよね。

——TimeTreeの既存ユーザー層をTocalyに取り込もうとはしていないということですよね。

Anju これまでの経験から、サービス提供側の都合で誘導したユーザーってすぐ離脱してしまうんです。ユーザーの課題に向き合って、Tocalyが解決できる課題とマッチしたユーザーがちゃんとしたチャネルで入ってこないと使ってもらえません。

Fred 「User context is King」だから。ユーザーの背景にある文脈が大事だというのは絶対ゆるがないから。そこを無視していくら誘導しても、ユーザーは離れていってしまいます。

Tocalyのプロダクトマネージャーを担当したAnju

Anju 絶対今日のために用意してたじゃないですか、その名言(笑)。

Fred してないしてない! 今思いついたの。

——TimeTreeブランドにするかどうかで議論はあったんですか?

Fred 全然意見が割れないでスッと決まりました。そこは個人的に誇らしい。

Anju 結構そのへんの感覚は似てますよね。どうしたらユーザーに受け入れられるか、どうしたら使いやすいものになるかが考え方のベース。TimeTreeのサービスを作ったときもそうでした。

TimeTree全体の事業開発責任者 Tony

Tony FredとAnjuとFrodoって感覚が似ているんですよ。TimeTreeはプロダクトオーナーや企画系の考え方をするメンバーが多くて、この3人もそう。僕はビジネス寄りなので、話を聴いていて面白いです。

——今回Tonyは3人の議論に加わってどうですか?

Tony Tocalyのビジネスはいかに早くマーケットを取りにいくか、スピードが重要です。3人の会話を見ていると「すぐやるぞ」という気持ちが伝わってきます。だから意思決定が早いのかもしれません。

Fred みんな「今やるべきだ」という手ごたえがあったんですよね。ただ僕は人的リソースなどをどうしようか思案していて、そうしたらしびれを切らしたAnjuに「やるんですか、やらないんですか」ってせっつかれたので、「よし、やろう」と。

Anju あの場にいたみんなが日程調整の可能性を感じていましたよね。他のアイディアも色々ありましたが、どれも時間やマンパワーがかかるものだったので。

Tony 意思決定の過程を見ていると、アライアンスの営業にも使えそうで興味深かったです。名前の話が3人一致でスッと決まったのも、結構僕には衝撃的だったんですよ。

「ビジョンは同じ、達成すべきミッションが違う」TocalyとTimeTree

——TimeTreeとTocalyは、会社全体の中でどのような立ち位置なんですか?

Fred 会社全体のミッションが「世の中の時間をつなげて、世界中の人々がよりよい明日を選択できるようにする。」です。TimeTreeに予定を集める要素はあるけど、つなげる要素はあまりないですよね。そこを担うのがTocalyです。

ブランドプロミスの「明日をちょっとよくするために」からずれていないかどうかも、Tocalyを作る途中で確認しながら進めました。

Anju ビジョンは同じだけど、達成すべきミッションが違うという話をした記憶があります。

Fred プロダクトごとにミッションは違うけど、どちらも会社として掲げる全体のミッションに紐づいているんです。実は以前に会社の「見える化」の記事で紹介したミッションツリーの中に、日程調整も元々入っているんです。それを昔はTimeTreeの中でやろうとしていたけど、Tocalyで実現する方向に変わっただけですね。

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Tony 「ビジネスのプラットフォームを作ってGoogleと戦うんですか?」と聞かれることもありますが決してそういうつもりではなく、僕たちがやろうとしているのはあくまで「予定同士をつなげてユーザーの明日をちょっとよくする」ことです。

副業やフリーランスが増えて会社という壁ががなくなり、つながることは今まで以上に大切になってきました。ビジネスだけでなく家庭という枠もなくなりつつあるのかもしれません。家事代行サービスなどで外部の人が家庭の中にいることも一般的になってきましたしね。

僕がTocalyでいいなと思うのは、元々価値のある「予定」というものをつなぐことでさらなる価値を生み出しているところ。しかもそれがスムーズにできる。

——Tocalyのようにビジョンを同じくする新規事業や新機能開発についてどう考えていますか?

Fred 「こういうのはどうか」と挙げるのはいつでもウェルカムです。ただし、実行できるかどうかはその時の会社のテーマによりますね。新規ユーザー数を伸ばすのが大事な時期なのか、リテンションが大事な時期なのかではやるべきことも変わります。

Tony メンバーの人数が2、30人だった頃は一度にひとつのことしかできなかったので、メンバーそれぞれがどこにフォーカスしているかあまり気にしなくてよかったんです。みんなで今やっていることにフォーカスせざるを得ないから。

人が増えて色々なことをできるようになり、たくさんのことを一度にやろうとしていた時期もありました。1、2年くらい前に今フォーカスすべきことを明確にするようになり、それ以降はフォーカスに合わせて動いています。今はビジネスにフォーカスを合わせている時期なので、ビジネスのもうひとつの柱としてTocalyに注力しているところです。

インタビュー中に名言が飛び出たCEOのFred

Fred 細かい機能改善などは各自が自律的に動いてやってくれていいけど、会社としての方向性に関わるような大きな新規開発はそうはいきません。いずれにしても賭けになるし、何かに賭けるということは賭けられないものも出てきます。賭ける意義があるかどうかについては議論が必要ですよね。

Tony 結構メンバーみんないい意味でさばさばしてるじゃないですか。何かの開発をしていても、今やるべきものではないと思ったらパッと切り替える。恣意的な思いを入れずに柔軟に切り替えられるのは、新規事業をやる上ではいいことだと思います。

Fred 我欲じゃないんですよね。「俺のアイディアを通したい」とかそういうのではない。

Anju 「こういう機能を作ったらユーザーが喜ぶんじゃないか」というのが軸になっていますね。昔はそれを次々に試していたけど、今はだいぶ思いを発散したのでミッションや目的に合わせて「これをやろう」と交通整理しながらやっています。

Fred 会社としては株主やいろいろな人に説明責任があるので、「こういう理由でここに賭けています」と説明できることからやっていく感じですね。もちろん外部だけではなくメンバーにも理由を説明しますし。……なんかTocalyの話じゃなくなってきたけど。

Tony Tocalyが生まれた土壌の話ですよね。

「予定」にまつわる今後の挑戦

——Tocalyの今後の展望はどうですか?

Anju まずは1対1の日程調整を究極まで便利にして、その次はチームなど複数人数の調整にトライしたいです。かなりペインが強いところだと思うので。

Fred 今はGoogleカレンダーだけの連携ですが、今後もしTimeTreeとも連携したら、仕事の予定とプライベートの予定を重ね合わせて日程調整できるようになります。Googleカレンダーと連携する日程調整サービスが他に出てきたとしても、そこはTocaly独自の強みになるんじゃないかと思います。

Anju TimeTreeの予定データだけ重ねてビジネスの日程調整をしてもペインの解決にはなりませんが、Googleカレンダーの予定ありきでTimeTreeも重ねるのは可能性がありますね。

——TimeTreeという色がない全く毛色が違うサービスというのも、いい転機だったかもしれないですね。

Tony 今まではtoCをやってきましたが、TocalyってtoCでもtoBでもありますよね。広告ではなくプロダクトそのもので収益を得るという新しい分野なので、色々チャレンジしながらやっていけるといいのかなと思います。

Anjuがよく言う「Product-Led Growth」の道を進むには、プロダクトの作り方や組織体制も変わってくると思うし、既に少し変わりつつあるのかもしれません。そういうところもうまく一緒に成長していければいいなと思います。

Fred Tocalyに限らず、初期段階から開発もビジネスも一緒のチームになって動く新しい動きがありますね。今回もTonyが初めから入って、色々なリレーションでフィードバックをもらったり初期ユーザーを獲得したりしてくれました。

Tony プロダクト開発の周りのごちゃごちゃしたものを事業開発がサポートできる体制を作れると、よりよいプロダクトができるんじゃないかと思います。

プロダクト開発チーム、面白いんですよ。メンバーがそれぞれ能動的に動いて、フィードバックも積極的に返す。そういう意識が事業開発側にも広がってくると、TimeTreeらしい体制になるんじゃないかと思います。

——ありがとうございました。TocalyとTimeTreeの今後にご期待ください!

次回は開発チームのみんなにTocaly開発の舞台裏を聴きます! お楽しみに👏🏻

プロダクトオーナーの吉本(Anju)に、Tocalyが作り上げられていく流れを聴いていきます。

プロダクトオーナーの吉本(Anju)にエンジニアの藤木(Stud)とデザイナーの朴(Enjay)も交えて、Tocalyに込められたこだわりや開発に取り入れた技術・手法について聴きました。